【テレ窓導入事例】御所市役所がサーバ不要の閉域網で開いた市民課前ロビーの遠隔相談窓口「一度の来庁で、離れた拠点の手続きまで完結」

御所市役所テレ窓導入事例

奈良県御所市の本庁舎1階、市民課の前のロビーに、この夏、一台のリモート窓口が据えられます。来訪者がボタンをひとつ押すと、画面の向こうに現れるのは、分庁舎の子育て推進課や、市街地から離れたクリーンセンターに勤務する環境政策課の職員。手元の書類は書画カメラで共有され、記入方法の案内までその場で受けられます。この窓口を支えるのは、通信をインターネットに一切出さない、市の閉域網の中だけで完結するLoopGateピアユニットを活用したネットワーク設計です。

導入組織: 奈良県 御所市役所
人口・世帯数: 22,445人・11,862世帯 ※令和8年5月末現在
導入製品: リモート窓口システム「テレ窓」
導入構成: 3拠点(市民課/子育て推進課/環境政策課)
ネットワーク: 閉域網
Webサイト: https://www.city.gose.nara.jp/

事例概要

導入前の課題

  • 転入などの手続きで、市民が本庁舎・分庁舎・クリーンセンターを回る必要があった
  • 専門職員を全拠点に置く人員余力がなく、電話では書類を挟んだ説明が成立しない
  • 来訪者には高齢の方も多く、タブレットやWeb会議の操作は負担が大きい

テレ窓を選んだ決め手

  • ワンタッチボタンとリモコンだけで使える専用機。パソコン運用も職員研修も不要
  • 書画カメラで申請書を映し、記入方法を画面越しにその場で案内できる
  • 市の閉域網の中だけで完結し、端末に相談内容やデータが残らない

期待される効果

  • 市民課ロビーの1台で、離れた2拠点の手続き相談まで一度の来庁で完結
  • 専門職員は執務室から応対し、本来業務に集中する時間を確保
  • プリントアウト連携、書かない窓口への発展も総合的に検討中

御所市について

御所市(ごせし)は、奈良盆地の西南部に位置する人口22,445人(令和8年5月末現在)のまちです。西には金剛山・葛城山が峰を連ね、東南部の丘陵から平地へと田園が広がります。昭和33年に御所町を中心とする4ヶ町村の合併で市制を施行しました。市域には5世紀から7世紀の遺跡や式内社が数多く残り、江戸期に陣屋町として栄えた「御所まち」の伝統的な街並みも息づいています。県都奈良市へ約25km、大阪都心へ約30kmという立地でありながら、歴史と自然がそのまま残る──市が掲げるキャッチフレーズ「行きたい、住みたい、語りたい。自然と歴史を誇れるまち」が、この土地の性格をよく表しています。

一方、行政組織の顔ぶれは決してコンパクトではありません。本庁舎には市民課をはじめとする窓口部門、分庁舎には子育て推進課などの福祉部門が入り、ごみ処理や畜犬登録、狂犬病予防などを担う環境政策課は、市街地から離れた大字栗阪のクリーンセンター内に執務室を構えます。限られた人員で、分散した拠点のそれぞれに窓口機能を持たせる。人口規模の小さな自治体ほど重くのしかかるこの課題に、御所市は市民課ロビーの一台から向き合うことを選びました。

御所市役所が抱えていた課題

転入届は本庁舎、犬の登録はクリーンセンター 市民に負担がかかる拠点分散

たとえば、犬を連れて御所市に引っ越してきた家族を思い浮かべてください。転入届は本庁舎1階の市民課で受け付けます。ところが愛犬の登録変更は環境政策課の所管で、窓口は市街地から離れたクリーンセンターの中。子育て世帯であれば、児童手当などの手続きで分庁舎の子育て推進課にも立ち寄る必要があります。転入というひとつのライフイベントのために、市民は複数の拠点を渡り歩くことになるわけです。

市民課でテレ窓のデモに立ち会った担当者は、クリーンセンターでの手続きについて「わざわざ行ってもらわないといけないので」と語りました。窓口の側も事情は同じです。専門知識を持つ職員は各課に限られ、すべての拠点に配置する余裕はありません。電話で済む相談もありますが、行政手続きの中心には今も紙の申請書があります。どの欄に何を書くか、添付書類は揃っているか──声だけのやり取りでは、書類を挟んだ確認がどうしても成立しません

タブレットやパソコンのWeb会議を窓口に置く案も、御所市にはなじみませんでした。来訪者には高齢の方も多く、画面のボタンを探しながらの操作は現実的ではない。市役所側でも、窓口ごとにパソコンを常駐させ、職員が接続操作を覚える運用は負担が大きい。市のDX推進の流れの中で「市民課の前にカメラを置いて、離れた課と相談できるようにしたい」という構想はあったものの、それを支える仕組みが見つからないままでした。

テレ窓が御所市役所の課題をどのように解決したか

書画カメラとワンタッチボタンが、紙の手続きをそのまま遠隔窓口に載せた

御所市役所テレ窓導入イメージ

2025年10月、株式会社RTCテックソリューションズ(以下、当社)の担当者が本庁舎を訪ね、実機を持ち込んだデモンストレーションを行いました。御所市が確かめたポイントは大きく3つあります。

第一に、来訪者が迷わず使えること。 テレ窓は専用機で、パソコンを介しません。来訪者側に置くのは、部署名を書いたワンタッチボタン。押せば担当課につながり、切るときもボタンひとつです。職員側もリモコンだけで着信応答からカメラ切替まで完結するため、研修コストがほとんどかかりません。つけたままにできる安定性も、専用機ならではの持ち味です。

第二に、紙の書類を挟んで会話できること。 デモのハイライトは書画カメラでした。手元の住民異動届を上から映し、画面越しにペン先で「この欄はこう書いてください」と示してみせる。間違えたら二重線で訂正、書き終えたら目の前の市民課の窓口に提出してもらう──そんな運用イメージまで一気に具体化しました。実演を目にした市民課の担当者からは「それいい。それいい。」と、その場で声が上がっています。紙文化が残る行政手続きを否定するのではなく、紙のまま遠隔に載せ替える。この発想が御所市の実情に合いました。

第三に、閉域網の中で完結すること。 御所市は庁内ネットワークとして閉域網を運用しており、窓口システムにも同じセキュリティ水準が求められます。テレ窓はインターネットを経由せず、サーバを介さないダイレクト接続で最大4拠点まで同時につながり、市の閉域網の中だけで運用が成立します。映像・音声は暗号化して送受信され、端末にはデータを保持しないため、相談内容や録画が機器に残りません。個人情報を扱う窓口でも導入のハードルが低いこの設計は、市のデジタル推進課との協議でも評価されました。では、本来インターネット上のサーバが担っている端末認証や接続先の仲介を、閉域網の中では誰が担うのか──それを解決しているのが、次にご紹介するピアユニットです。

閉域網でも置くだけ | テレ窓を支えるLoopGateピアユニット

クラウド上のサーバの役割を、閉域網の中で肩代わりする小型機器

自治体の庁内ネットワークは、LGWANに代表されるように、インターネットから切り離された閉域網での運用が原則です。セキュリティの面では堅牢な半面、クラウド前提のサービスの多くは、ここで採用を見送られてきました。テレ窓も通常は、クラウド上のサーバが端末認証と接続先情報の仲介を担っています。閉域網の中で使うには、この役割の引き受け手が必要になります。

その引き受け手がピアユニットです。イントラネットやVPN、LGWANといった閉域環境でテレ窓を利用可能にする、モデム程度のコンパクトな機器で、サーバのような複雑な構築は必要ありません。閉域網の中に設置してプライベートIPアドレスを固定するだけで、端末認証から接続情報の仲介、ソフトウェアの更新までが閉域網の中で完結します。映像・音声は端末同士が直接やり取りするため、相談の中身がピアユニットに残ることもありません。

LoopGate ピアユニット
LoopGate ピアユニット

専用機であるテレ窓は、もともと自由なアプリの実行やWebサイトの閲覧ができない設計です。映像・音声は暗号化して送受信し、会議データを保存せず、電話帳に登録のない相手からの着信は拒否できます。この専用機としての堅牢さに「インターネットに出ない」閉域網構成が重なることで、住民票や犬の登録といった個人情報に触れる窓口にも、安心して置ける仕組みになっています。

テレ窓が御所市役所にもたらした変化

運用像は、市民課で受けて、離れた課へつなぐ

御所市テレ窓利用シーン

運用の中心になるのは、本庁舎1階・市民課前ロビーの来訪者用窓口です。市民課がまず来訪者を受け、用件が子育て推進課やクリーンセンターの環境政策課に及ぶときは、ロビーの端末から担当課を呼び出す。案内までは市民課が行い、つながったあとは市民と担当職員が画面越しに直接やり取りする、という流れです。冒頭の「犬を連れて引っ越してきた家族」であれば、転入届のあとロビーで環境政策課を呼び出し、犬の登録変更までその場で済ませられるようになります。クリーンセンターまでの移動は要らなくなります。

窓口の向こう側にも変化が生まれます。分庁舎やクリーンセンターの専門職員は、本庁舎からの相談に執務室のまま応対し、来訪対応の合間に本来業務へ集中する時間を確保しやすくなります。人員を増やさずに、専門知識の届く範囲だけを広げる。小規模自治体の窓口改革として、御所市が狙うのはまさにこの一点です。

今後の展望

プリントアウト連携と「書かない」工夫で、ロビーの一台を市民サービスの入口に

御所市とテレ窓の取り組みは、3拠点をつないで終わりではありません。市では窓口の利便性をさらに引き上げる構想が、すでにいくつも検討の俎上に載っています。

ひとつは、プリントアウト連携です。遠隔地の職員が案内した申請様式を、来訪者スペース側のプリンターから出力する仕組みができれば、来訪者は画面の説明を聞きながら、その場で必要な書類を受け取れます。書画カメラによる記入案内と組み合わせることで、「用紙をもらうために窓口をはしごする」場面を減らしていく計画です。

もうひとつは、複数の書類に来訪者が何度も自分の名前や住所を書かなくて済む仕組みづくりです。窓口DXの分野で「書かない窓口」と呼ばれる方向性を、御所市は遠隔相談窓口とあわせて総合的に検討しています。ロビーの一台は、単なるテレビ電話ではなく、こうした窓口改革全体の入口として位置付けられているわけです。

拠点構成にも伸びしろがあります。テレ窓はサーバを介さず最大4拠点まで同時接続でき、設置後の拠点追加にも対応します。市の仕様書は窓口対応に加えて職員の会議や研修での利用も想定に含めており、運用が軌道に乗れば、活用の場面は窓口の外にも広がっていくはずです。本庁舎と分庁舎、クリーンセンターを行き来していた職員間の打ち合わせが画面越しに済むようになれば、移動にかけていた時間はそのまま市民対応の時間に置き換わります。

人口2万2千人のまちが、市民課前ロビーの一台で「一度の来庁で手続きが完結する」窓口に挑む。本運用開始はゴールではなく、御所市の窓口が変わり続けていくための起点です。拠点の分散という地理的な条件を、市民サービスの質を諦める理由にしない──御所市の選択は、同じ規模の自治体が明日から検討できる、現実的な答えのひとつだと感じさせます。