
滋賀県米原市は、人口減少と持続可能な窓口体制への移行における課題に対し、MONET TechnologiesおよびRTCテックソリューションズと連携して「移動市役所」を導入しました。車載テレビ窓口システム「LoopGate」を活用し、閉域網によるセキュアで利便性の高い遠隔相談を実現しています。
米原市について
米原市は滋賀県東北部に位置する自治体で、面積は250.39平方キロメートル(うち琵琶湖の面積27.32平方キロメートル)です。県内には東海道新幹線をはじめ複数の鉄道・幹線道路が通っており、県内外への交通結節点という特性を持ちます。一方で米原市の人口はおよそ3万7千人で、市としては自治体の中でも小規模です。人口は減少傾向にあり、若年層の流出や高齢化率の上昇が近年の傾向として見られることから、持続可能な行政サービス体制の構築が課題となっています。市域は平野部だけでなく、伊吹山・霊仙山を含む山間部を抱えており、地域ごとに居住や移動の条件が大きく異なる地域特性があります。
米原市の課題
米原市は、人口減少と少子高齢化に伴い行政課題が多様化・複雑化する一方、財政効率化や人材確保といった制約を抱えており、従来の窓口体制のままでは行政サービスが届きにくくなり、持続可能な体制づくりが困難になることを想定していました。
市内ではマイナンバーカードの保有率が約85%まで上昇し、証明書のコンビニ交付利用も約30%に達するなど、「行かない市役所」を支えるデジタル基盤は整いつつあります。一方で、デジタル活用に不安を持つ住民や、対面での説明・支援を必要とする住民が一定数存在していることも明らかでした。
特に「移動が困難」であり「サポートを希望する」住民に対しては、来庁を前提とした行政サービスでは対応に限界がありました。市内には4か所の行政サービスセンター(息郷、醒井、柏原、吉槻)がありますが、これらは徒歩来庁が可能な地域に限られ、周辺地域以外の住民にとってはアクセスしづらい状況にありました。なお、この行政サービスセンターは令和8年3月末に閉庁予定です。
また、窓口業務は総合的で幅が広く、後継者育成が難しいことに加え、自治体標準化システムの導入など制度・運用条件の変化も重なり、持続可能な窓口体制への再構築が必要でした。 こうした背景から米原市は、固定拠点の維持やデジタル完結のみではなく、住民のもとへ行政サービスが出向く「移動市役所」という選択肢を検討するに至りました。
見直しの背景と課題

あわせて、移動市役所における相談・申請支援の方式についても検討を行い、他市で見られるZoom等のインターネット環境による対応と比較し、閉域網によるセキュアな通信環境で相談内容が外部に漏れない安心感があること、対面で会話するような自然な相談が可能であること、操作が簡便で年代を問わず活用しやすい点を重視しました。
課題解決のための窓口機能・窓口体制
図2は、行政手続きにおけるデジタル活用度(サポートの要否)と、市民の移動手段という2つの軸から、今後の窓口機能の役割分担を整理したものです。 米原市では、デジタルで完結する「行かない市役所」、来庁を前提とした固定窓口、そして移動が困難な住民に寄り添う「移動市役所」を組み合わせることで、市内全域をカバーする窓口体制への転換を図っています。

移動市役所のサービス概要
図3は、移動市役所が担う具体的なサービス内容を整理したものです。 本庁舎とオンラインで接続したうえで、証明書発行、相談支援、各種申請サポートなどを車両内で完結できる構成とし、民間事業者との連携による相乗効果も想定しています。

LoopGateがどのようにサポートしたか
米原市は、『地域で安心して住み続けられる持続可能な行政サービスへの転換』の一つの手段として、デジタルの利便性と対面による支援の双方を活かしながら、「地域に出向いていくことのできる窓口」を実現する方策を検討しました。
その結果、どの地域においても、徒歩で来庁することが難しい住民に対して行政サービスを届ける手段として、『移動市役所』という新たな窓口形態を採用し、車両による巡回運用を開始しました。
移動市役所では、来庁を前提とせずに行政サービスを提供する一方、住民がその場で専門的な相談や申請支援を受けられる体制が求められました。そこで、車内にテレビ窓口システム(LoopGate)を搭載し、本庁舎の担当課と接続できる遠隔相談環境を整備しました。 運用面では、対応時間は午前9時30分から午前11時30分、午後2時から午後4時までとし、1日2回(2か所)を巡回しています。職員体制は運転手1名、窓口対応職員1~2名です。
移動市役所で掲げるサービス
- らくらく窓口サービスによる諸証明発行
(マイナンバーカードを持っている方は、コンビニと同じ手数料で即時交付) - テレビ窓口システムを利用した相談支援
(テレビ画面を通して、来庁者本人が担当職員と詳細な相談が可能) - 各種オンライン申請手続のサポート
・マイナンバーカードを持っている方:オンライン申請のサポートにより申請受付 - 保険証関係申請サポート
(保険証は後日送付等で対応) - まいちゃん号関係の申請受付
(※まいちゃん号は、米原市が運行する予約型の地域公共交通サービス) - 紙おむつ類 専用ごみ指定袋の交付
運用範囲は、市内4行政サービスセンター周辺を中心に、学びあいステーション等も巡回してきました。令和7年11月から令和8年3月末までは試験運行期間として、市民ニーズの検証と実態把握を進め、1月以降は商業施設でのPR等にも展開予定です(例:平和堂フレンドマート山東店、フタバヤ近江店)。 また、移動販売車(株式会社セブン‐イレブン ・ジャパン)との同時展開による相乗効果も視野に入れています。
移動市役所LoopGate-導入後の効果・変化
移動市役所の運用を開始した結果、来庁を前提としない形で行政サービスに触れる機会が生まれました。巡回中には、「見かけたので立ち寄った」「市役所に電話するほどではないが聞きたかったことがある」といった利用が確認され、固定窓口とは異なる新たな行政との接点として機能し始めています。
通信環境が必ずしも安定しない場所においても、音声が優先して通信されることで会話が途切れず成立しており、移動環境下でも相談・申請支援が実運用として成立していることが確認されています。
職員側からは、機器操作が簡単で分かりやすく、現場で扱いやすい点が評価されています。
米原市では、4市合併当時に分庁式運営を支える目的で、別のテレビ会議システムを導入した経緯がありましたが、当時は日常業務に十分活用されるには至りませんでした。その経験から、移動市役所におけるテレビ窓口の導入にあたっては、操作性や実運用での使われ方を慎重に見極める姿勢がありました。 その上で、今回の移動市役所におけるテレビ窓口システム(LoopGate)は、実際の運用を通じて「現場で無理なく使える仕組み」であることが確認されています。
米原市による評価・今後の展望
移動市役所の運用を進める中で、テレビ窓口システム(LoopGate)は結果として適切な選択だったと評価されています。他市で見られるZoom等のインターネット環境による対応と比較して、閉域環境による相談内容の安心感、対面に近い自然な会話が可能である点、操作が簡便で年代を問わず活用しやすい点が、実運用の中で評価されています。
実際の利用者からは、「思っていたより良い」「簡単」「よく話せる」といった声が寄せられており、移動が困難でサポートを希望する市民に寄り添う窓口として一定の手応えを感じています。 今後は、商業施設での展開や、医療・福祉分野など他分野への活用も視野に入れながら、地域に出向く行政サービスの在り方を検討していく考えです。
よくある質問(FAQ)~米原市移動市役所とLoopGate導入について~
他市の事例で見られる一般的なWeb会議ツール(Zoom等)と比較検討した結果、以下の3点が評価され採用に至りました。
- セキュリティと安心感
インターネット網ではなく「閉域網(閉じたネットワーク)」を利用するため、個人情報や相談内容が外部に漏れる心配がないこと。 - 通信の安定性
山間部など電波が不安定な場所でも、音声が優先して通信されるため会話が途切れず、対面のような自然な相談ができること。 - 操作の簡易性
複雑な設定が不要で、電源と通話ボタンを押すだけで接続できるため、機器に不慣れな職員や高齢者でも直感的に利用できること。
主に以下のサービスを提供しています。
- 証明書発行
マイナンバーカード保有者はコンビニ交付と同等の手数料で即時発行が可能です。 - 遠隔相談・申請支援
車載のテレビ窓口システム(LoopGate)を通じ、本庁舎の担当職員と顔を合わせて詳細な相談や申請サポートが受けられます。 - その他
乗合タクシー「まいちゃん号」の申請や電子申請のサポート、紙おむつ類専用ごみ指定袋の申請 などにも対応しています。
現在は市内4か所の行政サービスセンター周辺や「学びあいステーション」を中心に、1日2か所を巡回しています。
令和7年11月から令和8年3月末までは試験運行期間として、市民ニーズの検証を行いながら、令和8年1月からは、地域の高齢者で交流し集まっている「お茶の間サロン」や、「平和堂フレンドマート山東店」や「フタバヤ近江店」といった商業施設への展開も実施しており、市民が日常的に立ち寄りやすい場所へ行政サービスを届ける体制を強化していきます。
本事例を支える仕組み・関係者
本事例では、MONET Technologiesが推進する行政MaaSの枠組みのもと、移動型車両を活用した「移動市役所」において、車載環境での遠隔相談・申請支援を実運用しています。
その中で、相談内容の機密性を確保できる閉域環境と、対面に近い自然な会話を両立させる仕組みとして、RTCテックソリューションズが開発したテレビ窓口システム(LoopGate)を採用しました。
通信環境が変動し得る巡回運用においても、音声を優先した安定した会話成立と、現場職員が扱いやすい簡便な操作性が、実運用の要件として評価されています。
RTCテックソリューションズについて
リモートコミュニケーション領域のシステム提供・導入支援を行い、自治体・金融等の要件(運用・セキュリティ)に合わせた遠隔コミュニケーション環境の構築を支援します。(本件では車載テレビ窓口の遠隔コミュニケーションを担当)
LoopGateについて
テレビ窓口・遠隔相談等で用いられる遠隔コミュニケーション(映像・音声)システムです。(本件では移動市役所の車両に搭載し、本庁舎等と接続)
MONET Technologiesについて
移動サービス基盤を提供する企業です。本件では行政MaaSの文脈で移動型行政サービス(車両活用)を推進する構成を担います。
行政MaaSについて
移動型車両を活用して住民がアクセスしやすい場所まで行政サービスを届ける移動型行政サービスです。行政MaaSはMONET Technologies株式会社の登録商標です。






