LGWAN対応Web会議システム比較|自治体が三層分離で外さない選定基準【2026年版】

LGWAN対応Web会議システム比較|自治体が三層分離で外さない選定基準【2026年版】

ある市役所の情報政策課の方が、こんな相談を受けたそうです。

福祉の部署から「他の支所と、画面を見ながら毎日やりとりしたい」。教育委員会からは「研修をオンラインでやりたい」。窓口の担当からは「専門職が本庁に1人しかいないので、支所の窓口とつないで遠隔で相談に乗れないか」。どれももっともな要望です。そこで製品を探し始めると、各社のサイトには「自治体導入実績多数」と並んでいる。よし、これでいけそうだ——と思った矢先に、ネットワークの担当者から一言。「それ、うちの環境のどの系統で動かすつもりですか?」

ここで、多くの自治体の検討がいったん止まります。自治体のネットワークは民間企業とまったく違う構造になっていて、その構造を踏まえずに製品を選ぶと、契約してから「うちの系統では動かせませんでした」という事態になりかねないんです。

この記事では、自治体のネットワーク環境でWeb会議・テレビ会議を実現する方法を、3つの方式に整理して比較します。そのうえで、自治体の調達で外さないための選定基準をチェックリストにまとめ、最後に「庁内会議・庁舎間の常時接続・遠隔窓口相談・災害対策」という用途別の選び方まで落とし込みます。読み終わるころには、「うちの庁舎は、どの方式の、どんな製品を選べばいいか」の当たりがついているはずです。

自治体のネットワークは「三層」に分かれている

三層分離

製品比較の前に、押さえておきたい前提があります。それが、自治体特有の三層の対策(三層分離)です。ここを飛ばすと、製品選びそのものが空振りになります。

きっかけは2015年。日本年金機構が不正アクセスを受け、約125万件の年金情報が外部に流出した事件でした。これを受けて総務省が、自治体の情報システムを役割ごとにネットワークを分けて守る「三層の対策」を要請します。具体的には、次の3つです。

  • マイナンバー利用事務系:住民記録・税・社会保障など、最も機微な情報を扱う層。他のネットワークから原則として遮断され、二要素認証などで強く守られています。
  • LGWAN接続系:財務会計・人事給与・庶務事務など、庁内の業務を扱う層。LGWAN(総合行政ネットワーク)という、自治体専用の閉域網につながっています。
  • インターネット接続系:メールやWeb閲覧、ホームページの管理など、外の世界とやりとりする層。

LGWANというのは、全国の地方公共団体を相互につなぐ行政専用の閉域ネットワークで、運営はJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)が担っています。インターネットから論理的に切り離されているのが最大の特徴です。

この3層は、近年「業務効率も上げよう」という方向で見直しが進み、αモデル(オリジナルのセキュリティ重視型)/βモデル(業務はLGWAN系に残し、グループウェアをインターネット系へ)/β’モデル(業務システムもインターネット系へ寄せる)/α’モデル(αをベースに特定のクラウドサービスのみ利用)といったバリエーションが存在します。どのモデルを採っているかは自治体ごとに違い、これが「同じ製品でも、A市では使えてB市では使えない」が起きる原因になります。

LGWAN接続系ですが、もともと映像会議のための回線ではありません。 全国の自治体を相互につなぐLGWAN接続系が標準で提供しているのは、通信回線と基本的なプロトコル(DNS・SMTP・NTPなど)、電子メールや掲示板といった行政事務向けの機能が中心で、テレビ会議やリアルタイムの映像・音声は標準の提供機能には含まれていません。団体間の直接通信を制限する設計で、回線も全国共用・ベストエフォートが基本のため、帯域も潤沢とは言えません。

LGWANでWEB会議を行う場合、α’モデルを検討するのは一つです。αモデルからβモデル、β’モデルへの移行はシステム入れ替えなどが発生するため敷居がありますが、αモデルをベースにしたまま、LGWAN接続系の端末からインターネットのWeb会議SaaSを使うため、許可したサービスだけを直接インターネットへ出すローカルブレイクアウトという構成がα’モデルでは可能です。LGWAN接続系の端末で、そのままZoomを開けば使えるわけではない、という点は押さえておきたいところです。

普通のZoomやTeamsの自治体利用について

ここでよくある誤解をひとつ。「ZoomもTeamsも自治体で使われているじゃないか」。確かにその通りです。ただし、どの系統で使っているかが肝心なんです。

ZoomやTeams、Google MeetといったインターネットSaaS型のWeb会議は、その名のとおりインターネットを経由して成り立っています。だから、これらが快適に動くのは原則として「インターネット接続系」。一方で、庁内の業務端末が置かれている「LGWAN接続系」は、インターネットとの通信が制限されているため、外部のSaaSへ直接つなぐことが基本的にできません

つまり、「インターネット接続系の端末でなら使えるが、業務情報を扱うLGWAN系の端末からは使えない」という分断が起きる。住民の機微な情報を画面共有しながら支所と相談したい、といった業務そのものに食い込む使い方になるほど、インターネットSaaSだけでは届かない領域が出てきます。

自治体環境でWeb会議を実現する「3つの方式」

では本題です。自治体がWeb会議・テレビ会議を実現する方法は、大きく次の3方式に分けられます。

方式①|インターネット系SaaS型(Zoom・Teams・Google Meet など)

インターネット接続系で使う、いわゆる一般的なクラウドWeb会議です。導入が手軽で、職員も操作に慣れているのが最大の利点。外部の事業者・住民とのオンライン会議や、説明会・研修の配信には十分に力を発揮します。

弱点は、前章のとおりLGWAN接続系の業務端末から直接は使用できないこと。庁舎間で業務情報をやりとりする際は、別系統で運用を行う仕組みが必要になります。映像は外部のサーバを経由するため、どこに映像が流れるかを住民や議会に説明する場面でも整理がいります。

方式②|LGWAN α´モデル

②は、①と同じインターネットのWeb会議SaaS(Zoom・Teams・Google Meetなど)を、LGWAN接続系の業務端末からも使えるようにする構成です。鍵になるのが、前章で触れたα’モデル=ローカルブレイクアウト。LGWANの高いセキュリティ(αモデル)を保ったまま、許可した特定のサービスだけを、LGWAN接続系の端末から直接インターネットへ“出す”ことで、業務端末のままWeb会議に参加できるようにします。

利点は、職員が使い慣れたSaaSを、業務端末のまま使えること。①のように別系統の端末をわざわざ用意しなくても、庁内の会議や外部との打ち合わせに参加できます。

一方で、注意点もあります。第一に、自庁のネットワーク(情報セキュリティクラウド等)がα’モデル・ローカルブレイクアウトに対応し、許可するサービスを管理する設定が前提になること。第二に、映像は結局インターネット上のSaaSを経由するため、「映像を一切外に出したくない」「庁舎間を常時つなぎっぱなしにしたい」「機微な相談を扱う」といった用途では、③の閉域で完結する方式のほうが向きます。α’モデルは“業務端末からSaaSを使えるようにする”ための構成であって、“映像を庁内で完結させる”ものではない——この線引きを押さえておくと、選定を誤りません。

方式③|LGWAN 閉域網・オンプレミス

3つめが、映像のやりとりも自分たちのネットワークの中で完結させる方式です。自庁内にサーバを置く(オンプレミス)か、専用機どうしを閉域網で直接つなぐ形をとります。映像が外部のサーバを経由しないため、情報漏えいや傍受のリスクを構造から小さくできるのが最大の強み。

庁舎間を常時接続でつなぎっぱなしにする、支所の窓口と本庁の専門職を遠隔窓口でつなぐ、といった「業務に深く食い込む」使い方に強い方式です。専用機タイプなら、職員のPCやブラウザのバージョンに左右されにくく、ワンタッチで発信できるなど、ITに詳しくない部署でも運用しやすいです。

閉域環境で高品質なテレビ会議を実現
閉域環境で高品質なテレビ会議を実現

3つの方式を、自治体が気にする軸で並べました。どれが「正解」ということはなく、用途によって向き不向きが分かれます

比較する軸①インターネット系SaaS型②LGWAN α´モデル③LGWAN 閉域網・オンプレ
主に使える層インターネット接続系LGWAN接続系閉域網・オンプレミス
業務端末から使えるか原則むずかしい使える使える
映像の通り道外部のクラウド経由外部のクラウド経由閉域網で完結
セキュリティ(攻撃面)広い(常時インターネット接続)中(許可した通信だけ外へ)狭い(外に出さない)
庁舎間の常時接続不得手不得手得意
遠隔窓口不安が残る不安が残る得意
事業継続リスク事業者のサービス継続に依存事業者のサービス継続に依存自庁の管理下に置ける
操作のしやすさ職員が慣れている職員が慣れている専用機ならワンタッチで簡単

ざっくり言えば、外部との会議なら①、庁内の一般会議なら②、業務に食い込む常時接続や遠隔窓口なら③。そして多くの自治体は、この3つを「どれか1つ」ではなく、用途ごとに使い分けるのが現実的な落としどころになります。

用途別で選ぶ自治体向けWEB会議

最後に、自治体でよくある4つの用途に当てはめて、現実的な選び方を整理します。

庁内の研修・一般会議

外部講師を招く研修や住民向けの説明会など「外とつなぐ」場面が多いなら、①インターネット系SaaS型、外部の人を交えない庁内会議や研修なら、②LGWAN α´モデルが考えられます。ここは「慣れた道具を、適した層で」が基本です。

本庁と支所・出先機関の「庁舎間常時接続」

支所や出先機関と、画面を見ながら日常的にやりとりしたい——いわゆる常時接続は、③オンプレミス・閉域網専用型の独壇場です。つなぎっぱなしでも映像が外に出ないので、業務情報を扱いながらでも安心して使える。朝礼や、専門職への「ちょっと聞きたい」を、距離を越えて日常にできます。

支所窓口・地域拠点での「遠隔窓口相談」

専門職が本庁に1人しかいない、支所まで来てもらうのは住民の負担が大きい——こうした課題には、③のなかでも遠隔窓口に特化したシステムが向きます。来庁者がボタンひとつで本庁の担当を呼び出せる形なら、操作で迷わせません。LGWAN 閉域網に対応していれば、相談内容が外に漏れる心配も抑えられます。

災害・BCP(事業継続)

災害時に、本庁と現地対策本部・避難所をつなぐ用途では、インターネットが不通でも使える閉域網・専用回線で成り立つ③が頼りになります。ふだんから常時接続でつないでおけば、いざという時に「つなぎ方を思い出す」必要がありません。

こうして見ると、「業務に深く食い込む常時接続・遠隔窓口・災害対策」では、③LGWAN 閉域網・オンプレミスが中心になります。

リモートコミュニケーションシステム「LoopGate」について

私たちRTCテックソリューションズは、まさにこの③LGWAN 閉域網・オンプレミス——「映像を外に出さず、庁内・閉域網のなかで完結させる」テレビ会議システム LoopGate(ループゲート) を提供しています。

「うちの庁舎は、どの系統で、どの拠点を、どうつなぎたいか」。そこを一緒に整理するところから、お手伝いできます。三層分離の構成を踏まえた疎通の確認(PoC)から、庁舎間の常時接続、支所窓口の遠隔相談まで、自治体の現場に合わせてご提案します。LGWAN・閉域網でのWeb会議・テレビ会議の導入や更新でお悩みでしたら、どうぞお気軽にご相談くださいませ。

閉域環境で高品質なテレビ会議を実現
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よくある質問(FAQ)

Q. 「LGWAN対応」と書いてあれば、うちの庁舎でそのまま使えますか? 
A. 必ずしもそうとは限りません。自治体のネットワークは三層に分かれ、採用しているモデル(α/β/β’/α´)も庁舎ごとに違います。「LGWAN対応」は前提条件のひとつで、自庁の実際の構成で疎通するかは別途の確認が必要です。本契約の前に、構成図での確認と小規模なPoC(試験運用)をおすすめします。

Q. ZoomやTeamsを自治体で使ってはいけないのですか? 
A. いけないわけではありません。外部との会議や研修・説明会など「インターネット接続系」で完結する用途では有力な選択肢です。ただし、業務情報を扱う「LGWAN接続系」の端末から直接は使いにくく、庁舎間の常時接続や機微な情報を扱う窓口相談には、別の方式が向きます。

Q. 小さな自治体・少ない拠点でも導入できますか? 
A. できます。LoopGateの場合、4地点までは多地点接続サーバーが不要なP2P接続で、シンプルに始められます。拠点が増えても、多地点接続サーバーを足して拡張できます。まずは本庁と支所の2拠点から、という始め方も可能です。